アスクルは大手文具・事務用品メーカーの一事業部門としてわずか4名でスタートし、その後成長を遂げて分離独立した会社です。今や店頭公開企業にまで発達しました。売上高はいまや親会社を抜く勢いです。
アスクルの成長には長い道のりがありました。スタート当時からアスクルは効率よい流通手法を確立し、新しい事業を開拓することと、メーカーによる顧客への直接販売を行うことで低迷している業界で新しいマーケットを確立しようとしました。具体的にはそれまで顧客は小売店や卸売業者でしたが、最終消費者が顧客だと定義し、その具体的なターゲットを中小事業所としたことです。当時中小事業所は全国に700万件ありましたが、そのほとんどが30人以下の小規模事業所でした。小規模なオフィスでの文房具類の買い方は、それまで主流だった大手メーカーの事務用品カタログを見て発注するか、急いでいる場合には自分で近くのお店に買いに行っていました。
アスクルではこのような事実に早くから着目し、中間業者を使わずにスピーディに商品を宅配するシステムを考えたのです。アスクルという名は「今日頼んで明日来る」というところからついた名です。食品や衣料雑貨と同様に文具・事務用品をカタログ通販するという方法です。
アスクルが始めたこのカタログ通販の仕組みは、当初小売店や卸売店から猛反発を受けました。そこでメーカーと中間業者は共に顧客を共有しあう同士だとして「エージェント」という役割を設定し、顧客開拓や代金回収や物流などの機能を扱う企業としてパートナー化することにしました。消費者からも商品の価格が高いということで始めのうちはなかなか受け入れてもらえませんでしたが、数々の反発を受けながらも価格を下げることに成功しました。また他社メーカーの商品が好き、といったブランド指定の顧客が多いことから、自社製品だけでなく、今までライバルだった他社の製品も取り扱うようにしました。これには自社内で反発を受けましたが、何とかやりとおすことができたそうです。
アスクルの考える顧客の立場に立った新しいマーケットは、それまでの常識を覆し、現在ではアスクルの成功をケーススタディとして成長を試みる企業も出てきているほどです。